高能率符号化技術
概 要
元の画質や音質を保ったままデータを小さくする技術の総称。まったく同じデータのまま圧縮するのは限度があるため、ときには、人間が気づかない程度の色合いやノイズなどを削減することで、劇的なデータ量の削減をする。
解 説
8Kテレビは、画質が高く、従来のフルハイビジョンテレビ(2K)の16倍のデータ量が必要になります。そのまま送信すると、電波を使うにしてもインターネットで配信するにしても、データが多すぎます。もちろんブルーレイなどのメディアに記録するのも難しくなります。
そこでデータを小さくしなければなりません。データを小さくすることを「圧縮」といいます。8Kテレビでは、「HEVC」という圧縮技術が使われています。
映像のサイズを小さくするには、「隣接する部分は、似たような色である」「前のコマと次のコマとは大きく色合いが変化しない」「前のコマの一部は、次のコマの少し動いたところにある」といった性質を利用します。
具体的には画像を小さなブロックに分けて処理します。そのブロック内で、「次のコマ」の予測をして、その予測とどの程度、離れるかなどを計算し、同じ色合いになる部分を除去することでデータを小さくします。また人間の眼は、細かいノイズなどがあってもあまり気にしないことが、「DCT(discrete cosine transform:離散コサイン変換)」と呼ばれる周波数変換を施し、人間の眼が気づきにくい部分(高い周波数と低い周波数に相当する部分。高い周波数の部分は、「白と黒」が格子に細かく並んで、人間の眼には混ざった灰色に見えるような箇所)は、ばっさりとカットしてしまうことで、大幅にデータ量を削減します。
この説明からわかるように、映像の圧縮技術では、元とまったく同じ画像のまま小さくするのではなく、「見た目でわからない部分」が割愛されます。ですから、元の画像には戻りません。このように、元に戻らない圧縮方式を「非可逆圧縮」と言います。
こうしたブロック単位の圧縮や予測、周波数は「HEVC」から始まったものではなく、すでに「DVD」や「ブルーレイ」でも使われている「AVC」という規格から(もしくはそれよりも前の圧縮技術から)使われている、基本原理です。
「HEVC」と「AVC」の違いは、圧縮率です。「HEVC」は、処理するブロックを変化させたり、予測の方法を効率化したりすることで、「AVC」に比べて半分程度にまで画像を小さくできます。
圧縮された映像を視聴する際には、元に戻す操作が必要です。これは「テレビ」や「パソコン」「スマホ」に内蔵される「HEVCのデコーダ」と呼ばれる部品(ソフトウェア)が担当します。
HEVCは再生時にたくさんの計算が必要なく、負担が低くなるように設計されているため、視聴者側のテレビやパソコン、スマホは、さほど性能が高くなくても問題ありません。反面コンテンツを作る側(放送局など)は、従来の圧縮方式(AVCなど)に比べて、高性能な処理ができる機器が必要です。実際、高速に処理できる、専用のプロセッサーが存在します。
実現できること
- ・より高画質・高音質なコンテンツの配信
- ・画質が現在と同じなら、1つのメディア(プルーレイやDVD)に、より長い映像、多くの映像を格納できる
将来の展開
「HEVC」は、8Kの技術ですが、8K以外のインターネット配信でも使われています。たとえば、インターネットのとあるアニメ配信サイトではすでに「HEVC」形式での配信が始まっています。
「HEVC」が採用されればデータサイズが小さくなるので、スマホで視聴する際に受信するパケット数が減り、パケ代が安くなります。もちろんデータ数が少なくなることは、インターネット全体の負荷を下げることにもつながります。
なおパソコン用の「HEVC圧縮ソフト」も提供されており、こうしたソフトを使えば、個人でもHEVCの優れた圧縮性能を試せます。
補 足
8Kでは音質も良くなっているので、音に対してもデータ量が増えます。そのため、音に対しても、映像と同じく高圧縮符号化技術が採用されています。